先日私の30年来の犬仲間と電話で話す機会があった。彼は、私がアメリカから導入したわが国初のショードッグ
Am. Ch. Mivicas Sancho Panza(ミビカスサンチョパンツアー、1976年輸入)を最も早く理解し以後当犬舎の犬造りに協力してくれた一人であっる。本職は下駄屋さんで展覧会場にも下駄で来るという下駄の伝統的な実用性を地で行くような職人である。実家がリンゴ農園なので時折美味しいリンゴを送ってくれる。
その彼も30年前は、ドッグショーマニアで東北自動車道が全線開通する前にも関わらず良く浦和市(当時、現さいたま市)大宮市(当時、現さいたま市)に居住していたときにも東京近郊のドッグショーに顔を出し私の自宅にも立ち寄り犬談義を交わしたものだった。
その会話の中で最近のドッグショーの衰退ぶりを話あった。私や彼がドッグショーに大いに燃えていた30年前ころと比べると出陳頭数と犬種は、問題にならないほど増えている。では何が衰退したかというとドッグショーを楽しむ人間が少なくなったという事である。
色々原因はあると思うが一番大きな原因は、セントバーナードのペット化である。ペットであるから犬質の善し悪しは、二の次で他人と自分の犬の比較は無関係であるようだ。早い話「もどきセントバーナード」でも良いという事である。
写真は彼の最近の繁殖犬「ジロ」1歳 父親クエイカー
我々のころはペットで飼育していてもセントバーナードの仲間の集まりということでとに角ドッグショーには皆誘い合わせて運動会気分で参加し犬談義の仲間に加わり色々と勉強させてもらったものである。そして自分の犬は自分で上手下手には関係なく人犬一体となってレクレィションに参加するという気分でリングを走ったものである。自分で引けない場合は手のすいている仲間が代わりに引くという連携もでき老若男女の垣根を越えて友好関係はかなりできていた。
しかしセントバーナードのペット化により当犬種の正しいタイプという純粋性に対する関心がかなり希薄になっている。そして展覧会は特殊な人のお遊びであるという認識が強いようである。
次の要因は、展覧会主催者とその団体にあると思う。展覧会に出陳するには出陳料を払わなければならない。JKCのショーだとローカルクラブ展で6000円、クラブ連合展で7000円、FCIインターナショナル展で1万円が相場のようだ。アメリカのショーの出陳料と比較すると3倍から4倍の高額な出陳料である。アメリカでは単犬種展でも全犬種展でも25ドル前後(2500円)が相場である。ただし同じ所有者が2頭目の犬を同一展覧会に出す時には5ドル程安くなる。
中身は、日米双方とも昼食は、各自負担であるが日本の場合出陳犬のカタログが1頭につき一冊ずつついてくる。2頭以上出陳する人にはゴミを押し付けられているようなものだ。
アメリカでは有料で必要な人は10ドル前後出して出陳目録を購入しなくてはならない。それはそれとして出陳犬が審査員の前で自己アピールできるのはせいぜい30秒から1分である。負ければそれでお終まいだ。1分6000円の娯楽って他にあるだろうか?亡国娯楽の一つパチンコだって6000円分パチンコ玉を買えば5~6分はもつのではないか?
勝ち残れる犬や出陳者にとっては高いという意識は薄れるだろうが出ると負けの犬の所有者はだんだんと興味がなくなるのではないか。
3つ目は、職業ハンドらーによるアマチュアハンドラーの駆逐である。
ハンドリングを業としている方々は、当然のことながらそれなりの技術と雰囲気を持っている。それはアマチュアの比ではない。
そして彼らはお客さんの犬を預かり全国を飛び回る。それも自分の好みの審査員を求め人気俳優の追っかけのようにその審査員の後を追う。同じリンクにこの追っかけハンドラーと全くの素人ハンドラーが競った場合勝敗は分かり切っている。職業ハンドラーであるから簡単に負けるような犬は顧客から預からないし、実力伯仲の程度差であれば、馴染みのハンドラーに軍配が上がるのは当然でそれでこそプロであろう。
しかしアマチュアは、うちの犬の方が良かったのにと思い2度と出陳しないか、相手がプロでは仕方がないと諦めるかのどちらかであろう。
次にJKC側にも理由があるようだ。
以前は、犬種審査でBOBを獲得すると必ずBIS戦に出場できるが現状では諸外国と同じようにグループ戦の1席にならないとBIS戦に出られない。システムとしては現在のグループ戦が当たり前なのであるがこのことにより出陳者が激減しているのも事実である。
もう一つは、マッチショーがチャンピオンシップショーと同一の出陳料であるという事である。本来マッチショーは、チャンピオンシップショー(チャンピオン完成のためのポイントがもらえるドッグショー)に出陳するための練習のための場である。犬の良さを評価するショーではない。昔はそのため主催者は、マッチショーには特別の賞品を贈呈した。現在はそれをJKCは禁止している。ゴルフの打放し練習場だって6000円も打てばくたくたになるほど練習できるが僅か1分前後の練習で6000円これもまた豪華な練習場だと思う。
以上が私の衰退の理由だと思われる要因を述べたが1分6000円というハイエンドなゲームに興じることは一般の人から見ると愚かな遊び人と思われてもおかしくない。
されどドッグショーである。ドッグショーの少ない北海道では雪解けとともにショーマニアはじっとしていられない。中にはドッグショーの日程が発表されたら日程の2か月前から申し込み主催者から「3週間前からです。」と突き返された愚かなドッグショー愛好者もいる。
愚かなショー愛好者頑張れ!